魔女の弟子の追想2   

魔女の弟子の追想1
魔女の弟子の追想3

たまに夢を見る。

夢の中で私は温室にいて、彼女と、黒尽くめの女の人と一緒に薬の材料になる植物を採取している。
彼女が私に何か説明しながら、黒尽くめの女の人はたまに一言二言。
彼女が笑って、黒尽くめの女の人も笑って、私は・・・笑っていたのだろうか?
笑っていたかはわからない、けれど。
ずっと、こんな日が続けばいいな、なんて。
そんな事を思っていたような気がする。

そんな、暖かい夢。

目が覚めれば、忘れてしまう暖かい夢。

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「僕の名前は・・・・ダニエル、ダニエルです。それ以外は何も思い出せません。」

雪の中で倒れていた子供は不安がるでもなく笑顔で私にそう言った。
何故そこにいたのかも、どこから来たのかもわからない不審な少年、ダニエル。
介抱した彼は特に体に異常も無く、身に纏っていた衣服は質素に見えるもののそれなりに質の良いもので。
そして目覚めた彼に素性を尋ねたところ名前の部分以外は特に迷う風も無く先の台詞を言ってのけたのだ。

不審である。

身元がわからないならと、それなりに信頼のおける施設へとお願いしようかといった提案も拒否。
かといって放り出すわけにもいかず・・・結果、彼は暫く私の手伝いとしてこの家へと置くことになった。

一緒に暮らし始めてわかったこと。
この少年、見た目はとても可愛らしくて美少年と呼ぶに相応しい風貌だ。
けれどその性格は少し悪いほうにひねくれいるらしかった。
くわえて自分の見た目はよくわかっているらしい。
見た目を利用して愛嬌を振りまき我侭を通す。
他人の慌てふためく姿が好きであるらしかった。
憎らしくも愛らしい、そんな加減で悪戯を繰り返した。

そして、たまに見せる不審な行動も。
早朝からふっと姿を消してまた時間をおいて夜中近い時間に帰ってくる。
たまにだけれどそれでもある程度決まった日数をおいてそんな行動を取っていた。

悪い子ではない、けれど、完全に信用はできない。
私は半ば保護者のように彼に接しながら、それでも隙を見せないように、それを悟られないように一緒の時間を過ごした。

彼が来てからは遠くに買い付けにも出れなくなってしまった。
それまで留守の際に手伝いをしてくれていた女性も急に縁談が決まったそうでそれっきり。
いや、彼を手伝いとして置いているならば留守を預けて出ることも可能なのだろう。
けれど私はそれができず、彼を親しく思いながらも一方で生じる疑念は払えずにいた。


「先生ー、この写真のひと誰?」

ある時彼はどこからか古い写真を引っ張り出してきた。
先生、といつもの呼び方で私へとその古い写真を突き出す。
それは幼い私と以前のここの住人であり義理の親でも会った彼女、私にとっての先生が写った写真であった。
それと、もう一人。
真っ黒い服を着た美しい女性。
こんなものをいつ撮ったのか、私は思い出せずに暫くその写真をただ困惑とともに見つめていた。

「ねぇねぇ、この人だよ。この人。誰なの?先生がたまに話す前ここに居た人じゃないよね?」
「え・・・・あ、はい。そうですね。彼女は・・・・」

私がいつ彼に彼女―先生の話をしただろうか?そんな疑問さえも浮かばず、私はじっと写真へと目を落とす。
黒い服の女性、思い出せない。覚えがないといえば嘘になる。けれど一向にその女性の記憶は出てこない。
何故だろうか、私は先生が居なくなる以前の記憶が酷く不鮮明で思い出せないことばかりだった。
この写真の彼女も、きっとその思い出せない事のひとつだ。
見覚えはあるのだ、見覚えは。
それなのに、思い出せない。
先生が居なくなった後の記憶は全てすべて、覚えているのに、何故。

「彼女、は・・・・・・」

必死に思い出そうと砂嵐のかかる記憶の中を探る。
頭が痛む。汗が噴き出して、あぁ、駄目だ。駄目。
視界が、ぐらりと、揺らいで。
あと少しで、思い出せる、のに・・・・。

バチン!と何かが弾けた音を聞いた気がした。

彼女の、名前は













「ユマ」

私の隣に座った先生が向かいの黒尽くめの彼女の名前を呼んだ。

「ユマ、今回はいつまでここに?」

黒尽くめの彼女、ユマ・ミシェリアは静かに紅茶のカップを置き先生へと向き直る。

「そうね・・・明日にはまた戻るわ。気がかりな事もあるし・・・なぁに?寂しい?」

からかうようにユマはクスクスと笑い微笑む。
先生もそんなユマに微笑む。

「ええ、貴女が居ないと少し静かになってしまうもの。ねぇ?xxxx」

微笑みはそのままに先生は私へと顔を向ける。
私はなんと答えただろうか?
思い出せないけれどそれでも、穏やかで楽しい時間であったように思う。

穏やかで、ずっと、ずっと続いて欲しい、大切な
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by sumomomoti | 2012-02-10 13:10 | モール・モール 駄文 | Comments(0)

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