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うさぎ少年と魔女とお茶会   

これのラストあたりから引っ張っております。

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「全部お前のせいだこの記号野郎!」
遅れて現れた彼、スペイドに対し開口一番、仔ウサギのダニエルは頭の帽子を押さえ敵意をむき出しにして言い放った。

ここはモール・モール。
私が鍵を開いた後のモール・モール。

今、帽子屋さんの代役としてお茶会らしい真似事をしている私の目の前でそれは起こっていた。
そもそも、今回のお茶会は現在ただ一人の魔女であるコゼットの頼みにより行われているものだった。
全ての発端はそう、前回のお茶会の準備の間に起こった出来事。
ダニエルと人形アリスが軽い気持ちで行ったどこかの二人の情事に対しての隠し取りが原因。

眠りの森で行われたその事件は夢来からの報告によりお茶会が開かれるまでの短い間にすぐに私やコゼットの知るところとなった。
それを聞いたその瞬間のコゼットの表情は思い出すだけで怖気が走る。
あぁ、人間っていうものは怒ると笑うんですねぇ・・・なんて。
その時点で人形アリスはともかくダニエル少年は既に逃亡済み。
彼の処断は保護者たる魔女に委ねられる結果となった。


それで、その原因の結果が現状。
どこかの二人、の片方であるスペイドに対して謝罪を行う筈だと聞いていたのだけれど謝罪どころか威嚇している。

そもそもこのダニエルという少年は本来あまりいい性格はしていないけれど、それでもコゼットの元で居候を始めて以降は丸くなった、筈なのである。
それが何故かこのスペイドにだけはやたらと敵意を向けている。それは明確に。
なんとなく理由はわかる。そして今回の事件を起こした思惑も。
多分、コゼットからこのスペイドを遠ざけたいのだろう、母親を取られたくない子供のように。
もしくは母親を取り合う子供同士。

背景はとにかく、結果として。
中々反省の色を見せないダニエルに対して保護者である魔女は罰を与える事にしたらしい。

「デニー君、君反省すると言ったでしょう。あれは嘘ですか?」

魔女はダニエルが必死に押さえつけている帽子を無慈悲に毟り取った。
その下にあったのは以前よりずっと短くなった彼の毛髪。
魔女が与えた罰は「髪を切る」事だった。
正直なところ、少し少年らしくなった程度であまり罰だとも思えないのだけれどそれでもダニエルには堪えたらしい。
目に溢れそうな程に涙を溜めて目の前のスペイドを睨みつけている。まだ謝罪の言葉は出てきそうにはない。
さてさて、今日のお茶会は長引きそうだ。

”でも、こういうのだって悪くないだろう?”

誰かの声が聞こえた気がして。

「・・・そうですね、悪くないです」

誰に聞こえるわけでもない、そんな独り言を小さく呟いた。
これはそんなどこかの一日のお話。




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by sumomomoti | 2014-02-16 22:52 | モール・モール 駄文

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